手仕事の職人巡り「越前箪笥」編

越前箪笥

 江戸時代後期に技法が確立した越前箪笥。ケヤキやキリの木地を独自の指物技術で加工し、漆塗りや鉄製金具で装飾した重厚なつくりが特徴です。特に、金具の文様に施されたハート形の「猪目(いのめ)」は、越前箪笥ならではの装飾意匠として知られており、2013年12月、福井県内で7品目となる「伝統的工芸品」に指定されました。今回は、市内で家具店や工房が集まる「タンス町通り」で、創業130年を誇る「越前指物工芸 上坂」を訪ねました。

若手を見守り産地再興を目指す

安立刃物製作所代表 安立 勝重

 越前箪笥の伝統工芸品指定に向け尽力したのが、「越前指物工芸 上坂」3代目の上坂哲夫さん。18歳で親の後を継ぎ、指物一筋で技を磨いてきました。「他の職人が良い仕事をしているのを見ると、『負けたくない』と競争心に火が付いた」と言います。職人たちがプライドを持って繋いできた伝統の技を、今は産地を挙げて守っていこうと、後継者育成に取り組んでいます。

 現在教えている若手職人の2人について、「若い人には、越前箪笥の技術を生かして、現代の生活に合った製品作りに自由に取り組んでもらいたい」と語ります。正統的な製品でなくてもその中に技があれば、使ってもらう中で違いがわかるはず。本物の良さを知ってもらうことが次の受注へとつながり、技の継承にも繋がっていきます。
 今後は、子ども達や観光客にも越前箪笥の技術に親しんでもらうため、木工体験教室などのイベントを開催していく予定です。かつてのような活気あふれるタンス町の再興を目指し、上坂さんは若い仲間と共に挑戦を続けています。

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技術の伝承に励む若手職人たち

長尾 創

 岡山県出身で、関西の大学を卒業後、長野県の技術専門学校で木工を学んでいた長尾さん。さらに高いものづくりの技術を身につけたいと考えていた頃、上坂さんの若手職人の募集を目にし、2013年に弟子入りしました。初めて見る伝統工芸の世界は、基礎は学んできたつもりでも、わからないことばかり。木の選び方や使い方を教わるところから始まりましたが、現在では素材選びから加工、金具の製作、漆を塗って仕上げるところまで全工程に携わっており、上坂さんの跡継ぎとして越前箪笥の未来を担う立場にあります。
 長く続いてきた技を継ぐことはプレッシャーも大きいが、「真面目に良いものを作ることが、越前箪笥の良さを伝えることになるはず」と長尾さん。今は誠実にものづくりに励み、将来的には自分の作品をきっかけに、越前箪笥職人を志す人が現れるくらいになりたいと願っています。

渡辺 康行

 一方、福井県出身で県内企業の工場の生産現場で働いていた渡辺さんは、「画一的な製品ではなく、自分の手で他にはないものをつくりたい」と、伝統工芸の世界を志しました。やるのであれば、できれば地域に根ざしたものづくりをして生きていきたいと、仕事をやめて2016年に越前箪笥の職人修行に入りました。伝統工芸の職人技は一朝一夕で身につくものではなく、「毎日毎日の作業が学びです」と渡辺さん。今は「てづくり工房 まつ井」で箪笥の制作を学んでおり、「越前箪笥の歴史も含めて日々勉強です。金具の文様にはそれぞれに意味があることを知り、気持ちを込めて作業をしています」と言います。自らの手でものを生み出す達成感を味わいながら、技を一つ一つ身に付け、悔いのない仕事をしていくこと、そして少しでも早くすべての工程を習得し、越前箪笥に関わり続けていきたいと、熱い気持ちで取り組んでいます。

 伝統的な町屋造りの家具店、工房などが軒を並べるタンス町通り。江戸時代後期から、木工技術を持つ職人が多く住み、町は嫁入り道具を求める人々で賑わいました。現在でも秋頃に、昭和の花嫁行列を再現した華やかなイベントが催されており、盛り上がりをみせています。伝統的な町屋が軒を連ねる雰囲気は散策におススメで、気軽に見学に応じてくれるお店もあります。

タンス町通り

住所:越前市本町、元町付近

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