手仕事の職人巡り「越前打刃物」編

越前打刃物

 1337年、京都の刀匠千代鶴国安が名剣を鍛える水を求めて越前に来住し、刀剣を打つかたわら農民のために鎌を作ったのが始まりとされる越前打刃物。江戸時代に漆かき職人が漆を求めて県外に出かけたときに越前鎌を売り歩いたのがきっかけで、全国へと広がったと言われています。1979年には、長い歴史と優れた製品を供給し続けたことが評価され、刃物産地としては日本で最初に伝統的工芸品に指定されました。「二枚広げ」や「回し鋼着け」などの伝統的な鍛造技術は、700年近く経った今でも確実に受け継がれています。
 共同工房タケフナイフビレッジには現在7社が入っており、打刃物の制作過程を間近で見学することができます。今回は、そのうちの1つ、安立刃物製作所の職人に話を伺いました。

打刃物の職人たちが同じ工房で作業する意味

安立刃物製作所代表 安立 勝重

 安立勝重さんは、18歳の時に越前打刃物の世界に入りました。「打刃物の需要があった昔は、依頼されたものだけ作っていれば良かったのですが、注文もどんどん少なくなって…」。このままでは衰退してしまうと危機感を覚えた職人たちが、自ら発信する場として作ったのがタケフナイフビレッジ。安立さんはこの立ち上げにも関わっています。
 近年はヨーロッパ諸国の展示会に幾度も出展するなど、職人たちが自ら積極的にPR活動を行っています。成果も上々で、今では切れ味やデザイン性が評価され、包丁やテーブルナイフが海外の著名なレストランでも採用されています。
 タケフナイフビレッジを立ち上げる際は、気難しい職人が同じ工房で働くのは無謀だと多くの人から言われました。「でも今こうして越前打刃物が世界的に認められているのも、団結して行動したからでしょう。1人ずつバラバラだったらこんなに広まらなかった」と安立さん。工房を集中させたというコストカットの面だけではなく、お互いが切磋琢磨し、協力しながら「越前打刃物」をアピールしてきたことが、今の成功につながったそうです。

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若手へと繋げるバトン。

池田 拓視

 「若手は、先輩の技を見て盗んで上達します。親方が1人の普通の工房とは違い、いろんな職人さんがいるタケフナイフビレッジは新たな技を見る機会も多く、僕ら若手にとってはありがたい環境です」。
 池田さんは、安立さんの甥にあたります。幼少期から叔父の打ち姿を見て「すごくかっこよかった」と憧れ、同時に越前打刃物に興味を持ちました。この道に進んで10年余り。ようやく包丁づくりの基礎となる、火づくり・鍛造の工程を任せてもらえるようになりました。

中里 隆寛

 一方の中里さんは、越前打刃物の鎌を専門とする工房に生まれました。最初は実家の工房にいましたが、1年前から包丁製作がメインの安立刃物製作所で修業を積んでいます。「同じ越前打刃物でも、使う道具から打ち方まで、何もかも違います。両方とも打てれば仕事の幅が広がるのではと」。今はまだ、鎌と刃物のどちらに行くかははっきりと決めていませんが、「ここでの時間は、必ず将来に生きるはず」と、力強く語りました。

 近年では越前打刃物は需要が増え、新たに人材を雇う余裕も出てきました。「越前打刃物の名が広がれば若い人も興味を持ってくれるはず。こうして技が絶えぬように担い手を育てることが私の使命です」と安立さんは目を細めます。

 今回伺ったタケフナイフビレッジの工房には見学通路があり、誰でも職人の技を間近で見ることができます。体験教室も充実しており、中でも本格的な包丁を作る体験コースや、短時間でできるメタルキーホルダー作りは、海外の観光客からも人気。工房で作った商品の販売コーナーもあり、伝統技術が詰まった製品を手に取り確かめることができます。

  • 展示・販売コーナー

  • 体験には本格的なコースも

タケフナイフビレッジ

住所:越前市余川町22-91
電話:0778-27-7120
開館時間:9:00?17:00
休館日:1月1日?3日
見学料:無料
体験料:メタルキーホルダー製作教室600円
    小出刃教室7000円(18歳以上)
    包丁教室15000円(18歳以上) など
     ※7日前までに要予約
HP:こちらから

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